
ジャーボートなどに対しても、あわてずに対処ができるというもので、そういう場面に出会ったとき、にんまりとほくそ笑んでやり過ごせるようになれば、それこそ老獪さを秘めた頼もしい船長といえます。
かなり昔の話ですが、ある雑誌で定年を間近にひかえたベテランの船長に、今まで無事故でこられた要因を尋ねたところ、その船長は「狭いところでは水路の中央を通ってきただけです」、と答えられていたのを読んだ記憶があります。
これこそ名言でありそれが基本なんだなあ、と、非常に感心しました。
災害の原因を追究していくと、必ずどこかで基本を忘れていることがわかります。
わずかの近道を選んだばかりに、そこには数々の難所が待ち受けていて、そのうちに災害に遭遇するというパターンです。
内航海連にもかなりのスピードで近代化の波が押し寄せてきている現在、災害の要因を、心理的、物理的、構造的に大別するとき、近代化のしわ寄せがどの部分にゆくのだろうかと私なりに心配もしています。
出入港作業に焦点を合わせると、分離通航の整備や、過密地帯での漁船やプレジャーボートの航行規制など、船舶を受け入れる側の港の方にもお願いすることがたくさんあります。
「一つの大事故が発生する前には、いくつかの小事故があり、その根底には、さらに多くの顕在化しない間接的な要因がある」
これはハインリッヒの理論と言う労働災害の発生原因に関する法則です。
災害はゼロにはならないけれど、しかし大きな災害だけは、ゼロにしなければいけないのだと心から思います。
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